藍染めの布地の上に、そっと器を置く。淡い桜色のかわいらしい小鉢。先週焼き上がったばかりの、一番の力作だ。隣には主人の大きな深皿。おおざっぱだけど、どこかやさしい、あの人らしい作品だ。 陶芸教室に通い始めたのは、もう六年も前のこと。下の子が中学に入学して、ようやく少し手離れしたのがきっかけだった。黙々と土に向き合うことが、私にとって一番落ち着く時間になった。 そんな私に興味が湧いたのか、休日はゆっくりしたいと出不精だったはずの主人が、いつの頃からか同じ教室に通うようになっていた。以来、二人の話題はもっぱら陶芸。今では良き創作仲間であり、一番のライバルだ。 土をこね、ろくろを回し、形を生み出す。乾燥、素焼き。釉薬をかけたら、いよいよ本焼き。大切に、大切に育てあげ、ようやく生まれる世界にたった一つの器。ちょっぴり不格好。でも、どこか愛らしい。もったいなくて、なかなか使うことができない私に、主人はいつも呆れ顔だ。
家を建てる。そう決まったとき、主人は迷わず、リビングにカウンターを造作しようと言った。 二人の器を並べる特別なギャラリー。美しい大理石の天板。趣ある和紙の壁紙。そして、やわらかな光を落とすダウンライト。器の美しさを引き立てる、最高の舞台だ。布を敷き、季節の小物を添える。するとどうだろう。たったこれだけで、とても高尚な作品に見えてくる。おもしろいものだ。 それにしても、近ごろは主人の方が味のある器を作るみたい。昨夜も、意気揚々と次回作について語っていたっけ。悔しいな。負けてなんかいられない。さぁ、次は何を作ろうか。