「いってらっしゃい」今日も元気に夫と息子を送り出す。どうしてこうも毎朝騒々しいのか。苦笑しながら洗濯物を干すのが私の日課。 独身時代は仕事ひと筋。大きなバッグを肩に、華奢なピンヒールで街を颯爽と歩く、いわゆる「デキる女」。家事なんてそっちのけで、昼間はバリバリ仕事、オフは彼や友人と話題の店に繰り出す。それがカッコイイって思っていたのよね。そんな私だったけど、結婚を機にスパッと退職。結婚するからには、家事を完璧にこなす「デキる妻」でありたい。あの頃は本気でそう考えてたの。 あれから 年。家事も人並み以上できるようになったと思う。夫は変わらず優しくて、家事を手伝ってもくれる。子どもも授かった。週末には家族で出かけることもあるし、笑顔も絶えることはない。そろそろ家を、なんて話も出てる。これといった不満はない。でもね、どこか、むなしいのよ。これでいいの?私の人生。ときどき、そんな閉塞感。 たとえ1時間、ううん、 分でもいいの。1人でゆったり過ごせる私だけの時間が欲しい。
「妻」や「ママ」から開放されて、「私」に戻れるような。 だからね、私、考えてるの。家を建てるなら、キッチンを個室にアレンジできるようにできないかしらって。私専用の個室って言うと贅沢だけど、扉を閉めてキッチンを個室化って言うなら、いいんじゃない?オーダーメイドのデザイナーズキッチンにして、フランス製のカラフルな鍋やスパイス瓶をおしゃれに飾ってね。窓際には大きなワークカウンター。煮込み料理の傍らで、本を読んだり、日記を書いたり。ね、素敵な時間が過ごせそうでしょ? ほら、よく言うじゃない。ママが笑顔だと、家族みんなが幸せって。だからね、たまにはわがまま言わせてよ。ね、あなた。 「ママにもときどき私の時間をちょうだいね」